顎関節症の原因は?

1.顎関節症の原因は多因子です!

   顎関節症の原因を考えてみましょう。咬み合わせが悪いから顎関節症になる。そう考えられていた時代がありました。ありましたと書きましたが、メディアなどで顎関節症が取り上げられる時には、咬み合せの不調が顎関節症を引き起こすことや、全身的な症状、精神的な症状を引き起こし大変怖い病気であると強調されていて、怖い思いをされた方もいるのではないでしょうか?

 まず咬み合わせと顎関節症の関係ですが、現在では世界的な見解として、関係あるときもあるし、ない時もあるとされています。でも実際、咬み合わせが悪い人が顎関節症になり、咬み合わせを治したことで症状が治ることもあります。

 これはどういう事か考えてみたいと思います。

まず、原因と結果について考えてみましょう。すべての原因は、必ず決まった一つのことから起こるでしょうか?人間は機械ではありません。疲れているときもあれば調子のよいときもありますよね。仕事や家庭でイヤなことがあれば気が重くなりますね。また力仕事が多ければ歯をかみしめる事が多くなるかもしれません。実際、咬み合わせが悪い人はみんな顎関節症になるのでしょうか?周りを見渡してみてください。咬み合わせは悪そうなのに、何でもバリバリ食べている人がいますよね。1つの病気に1つの原因を当てはめるのを単一原因説と言いますが、咬み合わせの良し悪しだけが顎関節症の症状を左右するわけではなく、いくつかの要因が積み重なり、顎の関節や筋肉が個人の許容範囲を超えてしまった時に症状が出る多因子病因説が現在は考えられています。

 顎関節症や腰痛のような筋骨格系の運動障害の場合、症状がでたきっかけや原因がよくわからない場合が多いです。昨日まで何ともなかったものが急に痛くなる。思い当たることが無いと不安ですよね。たとえば寝違えたと言ったらどうでしょうか?なんとなくそうかなと思われますでしょうか。最近、歯を治していないとしたら、また自覚がないのに咬み合わせが問題と言うのは本当にそうなのでしょうか?
 では、咬み合わせの治療をして、顎の症状だけでなく、全身的な症状や精神的な症状が改善されることがあると報告されているのはなぜでしょう?
治療効果とは?
 「治療効果」という言葉があります。何かの治療を行って良くなったということです。咬み合せの治療を行って顎関節症だけでなく全身的な症状はじめ精神的な問題まで良くなることもあります。これは咬み合わせの治療の効果だけなのでしょうか?「真の治療効果」という言葉を聞いたことがありますか? 治療効果は、真の治療効果+自然経過+平均への回帰+プラセボ+ホーソン効果=治療効果と言われています。たとえば風邪を引いても通常、時間が経てば何もしなくても治りますよね。人間の体は通常、ホメオスタシスといって恒常性を保つ機能により自然治癒力があります。医療の基本は、人のこの自然治癒力をいかに助けるかにあります。なんとなくわかりますでしょうか?何もしなくてもなる可能性がある。特に顎関節症は、筋骨格系の運動障害ですので、症状が軽度であれば大抵は自然治癒することも多いと言われています。ですから咬み合わせの治療をしてもしなくても次回来院までの間に治っていた可能性があります。
 平均への回帰とは、症状の程度は偶然に左右されるので時間とともに自然に平均的な症状に近づくことです。プラセボと言う言葉は聞いたことがある人は多いでしょう。たとえば、うどん粉を薬だと言って飲んでも症状が治まってしまうことがあります。現在も薬の効果を調べる時に、細かい設定が必要ではありますが、本当の薬と偽の薬(うどんの粉の様に効果のないもの)を飲んでその差から薬の真の効果を調べるのですが、この偽の薬でも良くなる人が出てきます。この効果について以前は、気のせいの様に言われていましたが、最近では、脳の中での変化が見られることにより実際に効いているとの報告もあり、治療自体と言うよりも治療を行ったことに対する脳の反応が生じたかもしれないという事も考えられます。ホーソン効果とは、治療を受けたことで、患者さんが治るために様々なことに気をつけて努力する効果という事です。このように考えると、真の治療効果に対して、それ以外の要素も強いことがお分かり頂けたかと思います。実際、咬み合わせが悪い人が顎関節症に必ずなるわけではないように、咬み合わせの治療をして良くなる人も悪くなる人もいるのも事実です。通常日本では、咬み合わせの治療をして悪くなった人は、ここは駄目だと思い、転院するケースが多いようです。そうするとどうでしょう、咬み合わせの治療を行った先生は、良くなる患者さんもいることから、来なくなった人は良くなったから来なくなったと考える傾向にあるようです。あるいは、良くならないのは精神的な問題として片づけてしまうこともあります。
咬み合わせの治療は必ず必要か?
 ここまでのお話しで咬み合わせの治療を行う事のリスクが分かっていただけたでしょうか。ちなみに難治性の顎関節症や難治性の歯の痛みのほとんどは歯科治療から始まっています。自然経過やプラセボなどを意識しつつ後戻りができる治療で治る可能性もありますので、いきなり咬み合わせを治すことはあまりお勧めできません。
 それよりも他の要因、生活習慣などの悪習癖に気をつけることや運動療法などのセルフケアを積極的に行うことの方が少ないリスクで大きな効果があると思います。生活習慣の改善やセルフケアのやり方については後の章でお話しいたします。ただ、注意してほしいのは咬み合わせが原因となることはあります。ただ大抵は治した歯が高かったり、低かったりした場合ですが、それでも症状は比較的早く表れます。また、逆に顎関節症の症状改善のために生活習慣に気をつけたり、運動療法を行ったりすると咬み合わせが変わることがあります。長年の負担により歯がすり減ってしまった、あるいは歯を治しているうちに少しずつ顎の位置が変わってしまったことによる咬み合わせの変化が顎に影響を与えている場合や、歯ぎしりやかみしめなどで顎の関節や筋肉の状態が変わりそれに伴い咬み合わせの位置が変わってしまったことが考えられます。症状が良くなった後に、咬み合わせが変わってしまい食べるのに不自由であるとしたら、咬み合わせを治す必要があると思います。ただあくまで順番は症状を取るための可逆的な治療(後戻りできる治療)を行うことが原則です。
2.大きな原因は生活習慣と悪習癖
 顎関節症の原因は多因子であるとの話や原因がはっきりしないとの話をしました。現在では日常生活での習慣や悪習癖が、しらずしらずのうちに顎に負担をかけていて、身体の許容範囲を超えてしまい、顎関節症の症状として現れる場合が多いと言われています。急に思い当たることはないかもしれませんが、生活習慣や悪習癖を見直すことで症状が改善する、あるいは再発が防げる場合が多いので、これを機会にご自身の生活習慣や悪習癖を見直してみましょう。具体的な事柄については他の項目で詳しくお話ししていきます。
 
自分でできることは?
症状の確認と様子を見ていい場合と
          病院に行った方がいい場合

 症状が出た時の基本的な考え方は、前章でも書きましたが、さっきまで何ともなかったのに急に痛くなり、原因が分からないとなると不安になると思いますが、顎関節症は致命的な病気ではないので焦らないことです。まず落ち着いて、どんな症状か確認してみましょう。何もしなくても痛い?口を開けると痛い?口が開かない?かみしめると痛い?顎が鳴る?

 どうでしょう?痛みがある場合は、まず安静にすることです。何もしないでも痛い場合、顎を動かすと痛みが増すかどうか確認してみましょう。動かしても痛みが増さないとすると顎関節症ではない可能性があります。早めに病院へ行かれることをお勧めします。また腫れた感じがあるようでしたらやはり早めに病院へ行きましょう。顎関節症は感染症ではないので腫れることはありません。

何もしなければ痛くないとすれば、少し口を開けてみましょう。口は開きますか?痛みはどうでしょう?まずは安静にすることです。あまり顎を動かさず、食べるのも柔らかいものを食べてなるべく顎に負担が掛からない様にしてください。

 痛みが強い場合は、湿布やマッサージが効果的な場合があります。また生活習慣に気をつけることも必要です。1週間くらい様子をみて症状が徐々に軽くなる、あるいは治まってしまえばもう少し様子を見ても良いかと思います。

1週間たっても良くならない場合は、歯科を受診してください。ただ顎関節症は、得意な先生とそうでない先生がありますので、日本顎関節学会のHPなどを参考にしてください。

2)痛みが出た時にすぐに自分でできる事

 顎関節症の痛みは、ほとんどが筋骨格系の運動障害による痛みです。これは虚血性の痛み、すなわち血の流れが悪くなっての痛みです。ですから血の流れを良くして、痛みを起こす物質を洗い流すことです。

 急に強く痛んだ時には、まず安静です。ただ何もしないで痛む場合には冷やすことです。

動かさなくてもズキズキ痛む時は冷やしましょう。ただあまり冷やしすぎると血行障害が進み、治りが悪くなるので、タオルを濡らして5~10分程度冷やしてください。

 動かした時だけ痛いようでしたら、濡れたタオルを温めたり、ホットパットを電子レンジで温めたりして痛い所を温めましょう。

 お湯で温めたタオルを痛い所に当ててください。痛む筋肉は皮膚から少し深い所にあるので、なかなか温度が浸透しづらいのですが、乾いたものよりも濡れた物を長く当てておいた方が温まりやすいようです。

  痛みが強いようであれば、市販の痛み止めを飲むか早めに病院へ行くようにしましょう。 

 

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